一般的に胴体回りの筋肉(腹筋/腹斜筋/背筋/広背筋/僧帽筋/菱形筋/大胸筋……)などを躯幹筋と言い、それに下肢(脚と足)の筋肉を加えて抗重力筋という言い方をします。上肢筋とは、腕や手の筋肉です。
「クロールでは推進力の大部分はプルによる」という話を聞くと“腕”の筋肉が重要な感じを受けますし、いかに腕を鍛えようかと考えてしまいます。実際、腕の筋肉も重要なのですが、筋肉の特質として上肢の筋肉は必ずしも水泳には向いていません。何故なら、第一にその量です。幾ら太くて立派な腕を持っていても脚や躯幹の筋肉には及ぶべくもありません。筋力は筋肉の太さに比例しますから、太い筋肉を使う方が有利と言えます。第二に上肢の筋肉は比較的持久性に乏しい傾向があります。下肢や躯幹の筋肉は、「抗重力筋」というほどで、いつも重力に抗って活動しています。その役割上、非常に疲れ難く持久性に富んでいます。上肢筋はそうした役割がありませんから、持久性は高くありません。筋力と持久性を併せ持った抗重力筋の方が、上肢筋より泳ぐ上で望ましい筋肉であることがわかります。
筋肉の色……赤筋と白筋
魚には、マグロやカツオ、サケなどのように赤身のものとヒラメ、タラ、タイ、アジのように白身のものとがあります。前者は回遊魚に多く行動範囲も広く、漁場も比較的遠洋。後者は、逆に近海魚。泳ぎも前者は悠然と泳ぐのに対して、後者は俊敏に泳ぎまわる。赤身の筋肉を持った魚は、毛細血管がくまなく行き渡り酸素を取り入れながら活動しますから、疲れにくい反面俊敏な動きは苦手。後者は、俊敏に活動出来るけれど持久力には乏しい。魚ほどの明確な違いはありませんが、人間のカラダも筋肉の部位によって赤身傾向が強かったり白身傾向だったりします。下腿三頭筋(ふくらはぎ)を構成するヒラメ筋[写真1]は赤身筋の典型としてよく挙げられます。ヒラメ筋が赤身というのも面白いのですが……。上腕二頭筋等は比較的白身と思って差し支えありません。ヒラメ筋に代表されるように抗重力筋は常に重力に抗して姿勢を保つ必要から赤身傾向が強いといえます。
赤身や白身の割合は、カラダの部位によって違うだけでなく人種や個人によっても異なります。黒人は比較的白身が多いと言います。個人でも短距離選手は白身、長距離選手は赤身の割合が多いと言えるでしょう。 |
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