腕の後ろの上腕三頭筋は、比較的疲れを感じやすい筋肉です。
グリコーゲンの補給や乳酸の除去には血流の十分な確保が大切です。筋肉は収縮(緊張)しているときには、血流が滞りがちですが、十分に伸展(ストレッチ)し弛緩すると血流が増えます。そして収縮と十分なストレッチの反復が更に円滑な血流をもたらすことが知られています。
上腕三頭筋の働きをクロールのストロークを例に簡単に考えてみましょう。
フィニッシュからフォロースルーにかけて収縮した三頭筋は、リカバリーの中盤以降にハイエルボー(肘曲げ)を保つことによって伸展します。腕の入水からキャッチにかけては、特段の負荷が掛かるわけではありませんが三頭筋は収縮します。その後のハイエルボーでの肘上げでストレッチされ、フィニッシュでの強力な収縮につながります。このように1(ワン)ストロークの中で上腕三頭筋は、「収縮⇒伸展⇒収縮⇒伸展」を繰り返します[写真1]。1ストローク中の2度の上腕三頭筋の伸展(肘の屈曲)があり、このとき上腕三頭筋をどの程度しっかりと伸展(肘の屈曲)させられるかで乳酸の蓄積度合いが異なってきます。比較的肘を伸ばしたままリカバリーすると、上腕三頭筋がストレッチしないので乳酸はどんどんと蓄積します。フォロ−スルー後のリカバリーで適度に肘を曲げることによって乳酸の除去が促進されます。肘曲げに併せて上腕を内方に回転させることで上腕三頭筋のストレッチ度合いは更に高まります。水泳中のハイエルボーは、単に「多くの水をつかむ」と言うだけでなく、こんなことにも符合していることが分かります。
練習中のレストインターバルの際に、選手が三頭筋のストレッチをしきりとしている場面[写真2]を良く見かけます。泳ぎの中でも、ストレッチをしながら泳ぐことで「長い距離を楽に速く」泳ぐことが可能になります。
上腕三頭筋に限らず他の筋肉においても、ストロークの中でどのように収縮と伸展を繰り返しているかを確かめ、ストロークの流れの中で乳酸を溜めずに泳ぐようにしましょう。