は じ め に
 『健康』のための運動とはいっても、漠然とした『健康』というだけでは、必ずしも長期にわたって継続することは容易ではありません。「やせるため」とか「キレイに泳げるように」とか「腰痛の予防」といったハッキリとした目的も必要でしょう。そんな目的に適うように、各章毎にテーマ設定をしています。


第10章 栄養と運動
■10-6 食品のエネルギー量と質量
 脂肪を多く含む食品を摂ると太り易くなります。炭水化物や蛋白質は1gあたり4kcalですが、脂肪は1gで9kcalのエネルギー量を持っています。ですから当座使わない余分なエネルギーを皮下脂肪という形で蓄えるのは至って理に適っています。

 1gあたりのエネルギー量が炭水化物と蛋白質は4kcalで脂肪は9kcalということは、食事の質量を考える場合に重要なことです。もし、1回の食事で900kcalを摂るとします。脂肪だけで900kcalを摂ろうとすれば100g(900÷9)で足ります。炭水化物と蛋白質だけで摂ろうとすると225g(900÷4)も摂らなければなりません。勿論実際の食事においては脂肪だけとか、炭水化物だけということはありませんが、脂肪を多く含んだ食事では少ない質量の割に摂取エネルギーは多くなりがちだということです。逆に脂肪の少ない食事だとかなり沢山の量を食べられるということです。

 牛肉であればロースやサーロインよりフィレやテンダーロインを、鶏肉であればとり皮やスペアリブよりささみや胸肉を、マグロであればトロや中落ちより赤身を摂った方が沢山の量を食べることができます。因みに大トロは赤身の3倍近いエネルギー量です。
 料理法も衣を着けたフライよりも素揚げやソテーの方が、更に網焼きやボイルの方が低脂肪です。
 鶏のささみはバサバサしていて美味しくありません。脂肪分が少ないからです。食品は何でも適度な脂肪分があった方が味がまろやかになり美味しく食べられます。しかし、調理法の工夫として唐辛子や生姜、わさびなど辛味を加えたり酢(酸味)を上手に使ったり、あるいは片栗粉や小麦粉をまぶして水分を含ませたりすることによって美味しくいただく工夫は可能です。

 ミネラルやビタミンが豊富でエネルギー量の極めて少ない野菜類や海藻類など積極的に摂ることによって、食事の質量は変えずに摂取エネルギーを30%程度まで減らすことは比較的容易です。多品種の食品をバランス良く効果的に組み合わせて楽しい食卓を囲みましょう。


■10-7 単糖類と多糖類
 砂糖やブドウ糖、蔗糖や果糖などそれ自体が噛まずに甘味のあるものを単糖類といいます。一方多糖類とは鎖のようにつながったでんぷんで、消化分解の過程を経て時間をかけて吸収されます。よく噛むと甘味の出るご飯などは好例です。ジャガイモ等の芋類や豆類、そば、パスタなどのいわゆる主食は多糖類の多い食品です。
 単糖類と多糖類とを併せて炭水化物といいます。「高炭水化物な食事」といったときに奨励される炭水化物は多糖類を指します。

 単糖類はそれ自体で甘いということから分かるように、消化分解という過程を経ずとも摂ると直ちに血糖値を上昇させます。血糖値が高まると膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血糖をどんどん脂肪に変える働きをしますから要注意です。

 多糖類は、消化吸収に時間がかかりますから血糖値を急激に上げることがありません。従ってインスリンが急激に出る心配もありません。炭水化物(多糖類)を多く含む食品を十分に取りましょう。

 炭水化物量(g)エネルギー量(kcal)
ご飯 1杯60250
もりそば 1杯65330
スパゲッティミートソース78680
大福餅31140

 減量のためにダイエットを行っているヒトは少なくありません。ダイエットは空腹(食欲)との闘いです。食事30分前前後に飴を舐めると血糖値が上がりますから満腹中枢を刺激し、食事量を抑えることができます。但し、あくまでも少し舐めるだけです。沢山舐めると血糖値が大きく上がるので、インスリンが分泌し、逆にインスリンショックで低血糖になります。
飴玉を半分位です。


■10-8 ミネラルとビタミン
 炭水化物と脂質、蛋白質にミネラルとビタミンを加えて五大栄養素といいます。ミネラルやビタミンはエネルギー源としての働きはありませんが、重要な役割を担っています。よく炭水化物、脂質、蛋白質の三大栄養素を車のガソリンに、ミネラルとビタミンを車のオイルに例えることがあります。

 ミネラルは無機質ともいわれ主に体液の浸透圧保持や神経伝達などを担っています。
鉄……造血
カルシウム……りんと共に骨や歯を形成/神経の興奮抑制
カリウム……心臓や筋肉の機能を調整
りん……カルシウムと共に骨や歯を形成
ナトリウム……神経、筋肉の興奮を鎮める
ヨウ素……発育促進/基礎代謝促進

 ミネラルは、名前を見て分かるように自然界に存在する元素そのものです。大量に補給するとカラダに害を及ぼすこともありますから、サプリメントを摂る場合には十分に気をつけましょう。

 ビタミンは、カラダの様々な代謝の過程で触媒作用を司ります。ビタミンB群、C群は水溶性ですから摂り過ぎによる弊害はあまり無いものと思われますが(最近、水溶性ビタミンの過剰摂取による弊害を指摘する報告も多い)、脂溶性のビタミンA群、D群、E群はカラダに貯蔵されるので摂り過ぎると有害です。特にビタミンEは、一部の健康補助食品に多く含まれていますが、人類の歴史の中で今ほどビタミン摂取が大量に行われたということは無く、将来不安を指摘する声もあります。食事以外からの脂溶性ビタミンの摂取はあまり勧められません。
ビタミンA……視力を保つ
ビタミンB……神経の働き、エネルギー代謝を助ける
ビタミンC……副腎の働きを助ける
ビタミンD……骨の形成、維持を助ける
ビタミンE……血管老化防止/心肺機能を助ける


■10-9 水分補給
 サウナスーツを着てジョギングしているヒトやエアロビクスに励んでいるヒトを見かけることがあります。涙ぐましい努力です。確かに汗を出すと体重は減ります。しかし、皮肉にも汗をかくと体脂肪率は上がります。体脂肪率とは、全体重の中の脂肪とそれ以外の組織との比率です。水分を出せば脂肪以外の組織が減少しますから、相対的な脂肪組織の増加として数値化されます。
 体重の約70%は水分です。発汗によって水分量が減るだけの話です。体内の水分量が減ると熱中症や、血液濃縮で心疾患の遠因になります。カラダはそうならないように防衛機能を働かせますから、喉の渇きを訴えたり、排尿や発汗の減少で数時間の内には元に戻ります。発汗によって体重減少を図ることは無意味であるだけでなく、高温多湿な時期には特に危険です。
喉の渇きを感じる機能は、加齢とともに低下します。特に60才を過ぎた頃からこの傾向は大きくなります。それだけに子供や若年者以上に過剰な発汗によるリスクは高まりますから、“喉の渇きを感じる前に水分補給”は大切です。

 さて、最近「ポカリスウェット」「エネルゲン」「アクエリアス」「スピード」「ダカラ」「サプリ」など多くの“スポーツ飲料”が市販されています。運動で失われる糖質やミネラル、アミノ酸(蛋白質の一種)を適度に配合したものです。それぞれに運動後のカラダにとって必要なものを含んでいますから疲労回復などには一定の効果をあげます。ただ、気をつけたいことは一定量のエネルギー量があるということです。10-2ページで述べたように体重50kgのヒトが4kmのジョギングをして消費エネルギーはやっと200kcal程度です。上記の各種スポーツドリンクはペットボトル1本(500ml)で約60〜160kcalのエネルギーです(それぞれ容器に表記されています)。運動の度にこうしたスポーツ飲料を飲んでいては、体重コントロールの為に走ったヒトにとっては、何のための運動だったのか分からなくなってしまいます。ミネラルを豊富に含んだ市販の“ミネラルウォーター(硬水)”を摂る方が、エネルギー量を心配せずに飲めて良いかもしれません。

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